Q. 財政出動——政府が借金してお金を使えば、景気は回復するのか?
A. 短期的な押し上げ効果はある。政府が借りて使ったお金は消費・投資を呼び込み、景気を刺激する。ただし代償として物価が上がる。景気が上向いた分より生活コストの上昇が大きければ、差し引きで生活は苦しくなる。
なぜ政府はお金を刷れるのか
お金は借金から生まれる(信用創造)。政府も例外ではない。政府が国債を発行してお金を調達し、公共事業・給付金などに使う——これを財政出動という。自国通貨建ての国債を発行できる国は、理論上いくらでも「お金を刷り続けられる」。
なぜ民間金融機関は国債を買うのか
銀行:貸し出し先が少ない・低金利の時期には余ったお金の安全な置き場所として国債を買う。バーゼル規制上リスクがゼロ扱いのため、自己資本を使わずに大量保有できる。
証券会社:売りたい人・買いたい人の間に立つマーケットメイカーとして在庫で持つ。政府が国債を新規発行する際の引受役(プライマリーディーラー)も担っている。
保険会社:集めた保険料を長期運用する必要があり、国債との相性がいい。最も「自然な」買い手だ。銀行・証券は構造上・規制上の理由で保有している側面が強い。
MMT(現代貨幣理論)の考え方
「税収が足りないなら、国債を発行してお金を刷ればいい。インフレにさえならなければ財政赤字は問題ない」——これがMMT(Modern Monetary Theory)の主張だ。日本は長年、日銀が国債を大量に買い入れることでこれに近いことを続けてきた。
財政出動に賛否がある理由
賛成側(積極財政派)
不況やデフレのときは、政府が借金してでもお金を増やし経済を刺激すべきだ。民間がお金を使わない局面では政府が代わりに使うしかない。
反対側(財政規律派)
お金が増えすぎるとインフレ・円安になる。国債残高は将来世代への増税につながる。借金に頼り続けると財政規律が崩れ、信用不安を招くリスクがある。
財政出動の代償①——物価が上がる
市場に出回るお金が増えると、同じモノを奪い合う人が増える。モノの量はすぐには増えないため、値段が上がる。これは為替と無関係に起きる直接的な経路だ。
財政出動の代償②——円安が輸入物価を押し上げる
円が増えると、円の相対的な価値が下がる=円安になる。日本はエネルギー(石油・ガス)と食料の多くを輸入に頼っているため、円安は生活費に直結する。
①の直接インフレの上に、②の円安インフレが重なる。為替は「増幅装置」だ。
この構造が、zeiseeの各テーマの大前提になっている
財政赤字・インフレ・円安・賃金の実質価値の低下——これらは別々の現象に見えて、「お金を増やしすぎると国民の生活が苦しくなる」という同じ構造から来ている。
だから政府は「借金すればいい」とは簡単に言えない。インフレと円安という形で、そのコストは必ず国民に回ってくる。