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Q. なぜ若者は結婚しないのか?——「結婚できない」と「結婚したくない」の2つの理由

A. 「結婚したくない」と「結婚できない」の2つが同時に起きている。経済的に追い詰められて結婚できない層と、欲求が満たされすぎて結婚の必然性を感じない層——少子化の原因は一つではない。

「できない」側——アンダークラスの未婚率70%

社会学者・橋本健二氏の研究によると、非正規労働者を中心とした「アンダークラス」が日本社会に出現している。

規模

就業人口の13.9%・約890万人

かつての自営業層(旧中間階級・10.3%)を上回る規模になっている。7人に1人がアンダークラスだ。

収入

個人年収216万円——正規労働者の約4割

世帯年収379万円、貧困率37.2%。金融資産はほぼなく、資産の大半は親から受け継いだ持ち家のみ。

未婚

未婚率 約70%

「結婚したくてもできない」状態だ。年収216万円では生活を維持するだけで精一杯で、子どもを育てる経済的余裕がない。

アンダークラスは次世代を作れない——では誰が補填するのか

アンダークラス自身は結婚・子育てができないため、自分の階級を次世代に「連鎖」させることができない。しかし社会は低賃金の非正規労働者を必要とし続ける。

では誰がアンダークラスを補填するのか——他の階級の家族や子どもたちが転落してくることで埋まる。「うちの子は関係ない」と思っている家庭の子どもが、非正規のまま30代・40代になりアンダークラスに入る。

「したくない」側——ユニバース25が示す別の仮説

1972年、行動生態学者カルフーンは「食料・水・空間が完全に満たされたマウスの楽園」を作る実験(ユニバース25)を行った。結果は衝撃的だった。

マウスは爆発的に増殖した後、「美しい者たち(Beautiful Ones)」と呼ばれる個体が現れ始める——毛並みは完璧に手入れされているが、交尾も育児もせず引きこもるだけ。やがて個体数は急減し、最終的に絶滅した。

「欲求が完全に満たされた環境では、生物は繁殖という本能を失う」という解釈が生まれた。

日本への類比として面白い視点だが——注意点もある

安全・食・医療が満たされた日本で、特に都市部の高学歴・高収入層が「あえて結婚しない」選択をする現象は、ユニバース25の「Beautiful Ones」と重なる面がある。ただしこれはマウスの実験であり、人間への直接の適用は科学的に確立されていない。あくまで「思考の補助線」として見るべきだ。

2種類の「結婚しない・できない」が重なっている

経済的困窮型(アンダークラス・低所得層)

年収216万円では、結婚したくてもできない。少子化対策として最も有効とされるのは最低賃金の大幅引き上げ(1,500円以上)で、非正規同士が結婚すれば世帯年収500万円を超え、子育てのハードルが下がる。

欲求充足型(中間層・富裕層)

経済的には結婚できるが、「一人でいる方が自由」「子育てのコストが見合わない」という選択的非婚。インフラ・安全・食が揃った日本では、一人でも十分に豊かに生きられる。

この2つは別の問題で、解決策も異なる。「少子化対策」を一括りにして議論すると、どちらにも効かない施策になりやすい。

では、なぜ政府の対策はズレるのか?——子育て支援金という「独身税」

2026年から、社会保険料に「子ども・子育て支援金」が上乗せされ始めた。月額数百円〜千円程度とされるが、実質的に独身者や子のいない世帯が課税される構造から「独身税」と呼ばれる。

問題のすり替えが起きている

「子育て支援が足りないから少子化になっている」という前提で設計された施策だ。しかし実態は逆で、そもそも結婚できない人が増えていることが少子化の主因だ。

子育て支援は「すでに子どもを持てた・持てる夫婦」へのサポートにすぎない。アンダークラスの890万人は、支援の恩恵を受ける以前の段階——「結婚の入り口」にすら立てていない。

なぜ政府の目線はズレるのか

少子化対策の予算は「子育て世帯」という可視化しやすい対象に向かいやすい。一方でアンダークラスは政治的に組織化されておらず、選挙でも声が届きにくい。最低賃金の引き上げや非正規雇用の待遇改善は、企業コストを直撃するため政治的に動かしにくい。

結果として「やっている感」は出せるが、問題の根っこには触れない施策が繰り返される。

zeiseeで見てきた話と、すべて繋がっている

非正規雇用が増えた(ColumnWhyWagesStagnate)→ アンダークラスが890万人に拡大 → 結婚・出産ができない → 少子化が加速 → 現役世代が減る → 年金を支える人が減る(ColumnPension)——この連鎖は一本の線でつながっている。