Q. 日本の財政問題、結局どういうことなのか?——7つのつながり
A. 元本1,100兆円が減らない限り、借換えのたびに利払費は増え続ける。だから日銀は金利を大きく上げられず、インフレを容認する方が都合がいい。現金保有者は静かに損をし、投資できる層だけが守られる。そして低所得層の少子化が加速し、財政をさらに悪化させる——この7つは全部つながっている。
7つのつながり
① 元本は減らない
国債残高は約1,100兆円。プライマリーバランスが黒字になっても元本は一切減らない。利払費を払い続けるコストは消えない。
② 金利が止まっても、借換えで利払費が増え続ける
年間約120兆円の国債が満期を迎え、新発債に置き換わる。過去の低利率債(0.1〜0.5%)が2%超の債に切り替わるだけで、年間2兆円超のペースで利払費が増える。金利が今日から動かなくても起きる。
③ だから日銀は金利を大きく上げられない(財政ドミナンス)
金利をさらに上げると、借換え時の利払費増が加速する。「インフレを抑えるために利上げ」という中央銀行本来の動作が、財政の都合でブレーキをかけられる状態を財政ドミナンスと呼ぶ。
④ インフレを容認する方が、国にとって都合がいい
インフレが続けば名目税収が増え、プライマリーバランスが改善する。さらに1,100兆円の元本が実質で目減りする。「強くインフレを抑えに行く」インセンティブが構造的に弱い理由がここにある。
⑤ インフレ税——現金保有者から静かに徴収される
インフレが続く社会では、現金・預金の実質価値が毎年目減りする。誰も徴収しにこないが、確実に取られている。これがインフレ税だ。
⑥ NISAは「投資できる層だけの逃げ道」として機能する
インフレから守られるのは、株や不動産などの実物資産を持つ人だけだ。NISAはその手段を非課税で提供するが、余裕資金がある人しか使えない。使えない人は、インフレ税をそのまま払い続ける。
⑦ 低所得層の少子化が加速し、財政をさらに悪化させる
インフレで実質購買力が下がった低所得層は、結婚・出産のコストを賄えなくなる。日本では非正規雇用・低収入の若者ほど未婚率が高く、少子化との相関は明確だ。
少子化が進むと労働人口が減り、税収が下がり、年金・医療などの社会保障費の負担が重くなる。これは財政をさらに悪化させ、①に戻る。悪循環のループだ。
「少子化対策に予算を使う」場合も、その財源が国債(=将来のインフレ圧力)なら、ループをさらに回す皮肉な構造になりかねない。
今の日本はどこにいるか
・プライマリーバランス:一般政府ベースで2025年に小幅黒字(+3〜4兆円)へ改善
・利払費:約10.5兆円(2025年推計)。借換えが進むにつれ今後も増加が続く
・総財政赤字:約▲7兆円。PB黒字の拡大と利払費増のイタチごっこが続いている
・10年債利回り:2.59%(2026年6月時点)。この水準でも借換えのたびに利払費が積み上がる
急性の危機ではない。ただ、元本が減らない構造的な制約は続く。このサイクルが回る限り、投資している人としていない人の差は静かに広がっていく。
インフレは、国にとっての借金帳消し装置であり、資産家にとっての追い風であり、現金保有者にとっての静かな課税だ。——これはすべてつながっている。