Q. 「実質金利がマイナスだから円安」って、誰目線の話なのか?
A. 実質金利マイナスは、日本人と外国人で「損する経路」が違う。ただしどちらも円を売る方向に動くので、円安圧力になる。
名目金利差と実質金利差——何が違うか
「米国の金利3.5%、日本1%、差は2.5%だから米国に投資する」——これは名目金利差の話で、直感的に分かりやすい。実質金利は、そこからインフレを引いたものだ。
日本:名目1% − インフレ3% = 実質 −2%
1%もらっても物価が3%上がるので、実質的には2%の損
米国:名目3.5% − インフレ2.5% = 実質 +1%
3.5%もらってインフレ2.5%を差し引いても、実質1%のプラス
実質の差は −2% vs +1% = 3%。名目の2.5%差より大きい。
日本の生保・年金が円を売る理由
日本の年金や生命保険会社は、円建ての国債や預金で資産を運用している。100万円を日本国債(1%)に投資すると、1年後に受け取るのは101万円(名目)。しかし物価が3%上がっていれば、去年100万円で買えたものが今年は103万円になっている。
手元の101万円では同じものが買えない——購買力が実質的に目減りしている。だから海外の高い実質金利の資産(米国債など)に資金を移す。円を売ってドルを買う——これが円安圧力になる。
外国の投資家が円を避ける理由——経路が違う
では、アメリカの機関投資家が日本国債を買ったとする。日本のインフレで直接損するか?
では何が問題か。日本国債の1%を受け取っても、最終的にはドルに戻す必要がある。そのとき円安が進んでいれば、ドル換算の受取額が目減りする——損するのはインフレではなく為替だ。
そして「実質金利マイナス=日本から資金が流出し続ける=円安が進む」という構造が読めるので、外国投資家は最初から円建て資産を避ける。あるいは積極的に円を売る。実質金利マイナスは、彼らにとって「円安のシグナル」として機能する。
2つの経路、同じ結論
日本の生保・年金
実質金利マイナス → 円建て資産の購買力が目減り → 海外資産に移す → 円を売る
外国の機関投資家
実質金利マイナス → 円安が進む構造と読む → 円建て資産を避ける・円を売る
経路は違うが、どちらも円売りに向かう。実質金利マイナスが円安圧力になる理由はここにある。