Q. 特別会計の歳出: 429.5兆円は何に使われるのか?【2025年】
A. 国債の借り換え・年金・労働保険・外貨準備・財政投融資・エネルギー対策など、特定用途に特化した財布が14本ある(令和7年度から子ども・子育て支援特会が新設)。歳出総計は429.5兆円だが、借換・会計間重複を除いた純計は204.1兆円。規模順に以下に示す。
① 国債整理基金(222.1兆円)
国債の元本返済・利払い・借り換えを管理する専用口座。
国債借換: 136.2兆円→ 純計から除外(実質ゼロ)
満期国債を新発債で置き換えるだけ。歳入・歳出の両方に計上されるが経済的実体はゼロ。歳出総額429.5兆が膨らむ主因。
他会計・他勘定への繰入: 0.4兆円→ 純計から除外(二重計上)
他の特別会計・勘定への資金繰入(3,578億円)。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
元本償還・利払い: 85.5兆円= 歳出純計(222.1 − 136.2 − 0.4)
借換・二重計上を除いた「本当の債務返済コスト」。国債の元本+利払いの純粋な支出。
② 年金(100.3兆円)
国民年金・厚生年金の保険料収入と給付を管理。
他勘定への繰出(勘定間移転): 28.1兆円→ 純計から除外(二重計上)
年金特会内の勘定間移転(厚生年金勘定→基礎年金勘定等)。受取側の勘定の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
年金給付費: 72.2兆円= 歳出純計(100.3 − 28.1)
厚生年金・国民年金・基礎年金の給付費が中心。保険料(50.4兆)と一般会計からの国庫負担(13.3兆)等で賄う。
③ 交付税及び譲与税配付金(50.7兆円)
国税の一定割合を地方自治体に配付する地方交付税を管理。
他会計・他勘定への繰入: 29.1兆円→ 純計から除外(二重計上)
過去の借入金元本返済を国債整理基金等へ繰り入れる分。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
地方交付税・譲与税の配付: 21.6兆円= 歳出純計(50.7 − 29.1)
地方自治体へ直接配付される地方交付税・地方特例交付金・地方譲与税。
④ 財政投融資(22.5兆円)
政策金融公庫・JICA・URなど政府系機関への融資・出資を管理する「第二の予算」。
他会計・他勘定への繰入: 11.7兆円→ 純計から除外(二重計上)
財投債の元本償還を国債整理基金等へ繰り入れる分。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
政府系機関への融資・出資等: 10.8兆円= 歳出純計(22.5 − 11.7)
政策金融公庫・JICA・UR等への新規融資・出資。財投債と融資回収が主な財源で一般会計からの繰入ゼロ。
⑤ エネルギー対策(15.9兆円)
電源開発・原子力損害賠償・省エネ対策を管理。
他会計・他勘定への繰入: 14.0兆円→ 純計から除外(二重計上)
原賠証券・石油証券・GX移行債等の元本償還を国債整理基金等へ繰り入れる分。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
エネルギー対策事業費: 1.9兆円= 歳出純計(15.9 − 14.0)
電源開発補助・原賠機構への出資・省エネ対策補助など実際の事業費。
⑥ 労働保険(7.6兆円)
雇用保険(失業給付)と労災保険を管理。
他勘定への繰出(勘定間移転): 4.3兆円→ 純計から除外(二重計上)
労働保険特会内の勘定間移転(徴収勘定→雇用勘定・労災勘定等)。受取側の勘定の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
失業給付・労災補償等: 3.3兆円= 歳出純計(7.6 − 4.3)
雇用保険の失業給付・育児休業給付、労災保険の療養・休業補償等。保険料収入で自己完結に近い財源構造。
⑦ 子ども・子育て支援(5.8兆円) 令和7年度新設
児童手当・保育所運営費・育児休業給付を管理。令和7年度に年金特会・労働保険特会から分離新設。
他会計・他勘定への繰入: 0.1兆円→ 純計から除外(二重計上)
小口の会計間移転。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
子育て支援給付費: 5.7兆円= 歳出純計(5.8 − 0.1)
児童手当・保育所運営費・育児休業給付等。一般会計からの国庫負担(2.7兆)と子育て拠出金(1.1兆)等が財源。
⑧ 外国為替資金(1.5兆円)
政府短期証券(FB)を円建てで発行し外貨を購入、米国債等で運用する「外貨準備」の管理口座。歳出1.5兆円はその管理・運用コスト。外貨資産残高は財務省が毎月公表。
他会計・他勘定への繰入: 0.7兆円→ 純計から除外(二重計上)
ドル資金調達のための円借入の利払い等を国債整理基金等へ繰り入れる分。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
外貨準備の管理・運用費等: 0.8兆円= 歳出純計(1.5 − 0.7)
外貨資産の管理コスト等。運用収益(4.9兆)の一部を充当し、残り3.4兆は外貨準備に積み増し。税金からの補填ゼロ。
⑨ 食料安定供給(1.3兆円)
農産物価格安定・食料備蓄・農業補助を管理。
他会計・他勘定への繰入: 0.2兆円→ 純計から除外(二重計上)
小口の会計間移転。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
農業補助・食料備蓄費: 1.1兆円= 歳出純計(1.3 − 0.2)
農産物価格安定・国家備蓄(米・麦等)・農業共済等の実際の事業費。
⑩ 東日本大震災復興(0.6兆円)
東日本大震災の復興事業と復興債の管理。
復興事業費: 0.6兆円= 歳出純計(他会計繰入はほぼゼロ)
復興事業費が主な支出。主な財源は復興特別税(所得税2.1%付加・法人税10%付加、2013〜2037年徴収)。
⑪ 自動車安全(0.5兆円)
交通事故補償・自動車安全対策を管理。
他会計・他勘定への繰入: 0.1兆円→ 純計から除外(二重計上)
小口の会計間移転。受取側の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
交通事故補償・安全対策費: 0.4兆円= 歳出純計(0.5 − 0.1)
自動車損害賠償責任保険の再保険給付・自動車安全対策費等。自賠責保険の賦課金でほぼ自己完結。
⑫ 国有林野事業債務管理(0.3兆円)
旧国有林野事業の累積債務の返済専用。
他会計・他勘定への繰入(借入金返済): 0.3兆円→ 純計から除外(二重計上)
旧累積債務の元本返済を全額 国債整理基金へ繰り入れる。受取側(国債整理基金)の歳入にも同額が計上される二重計上のため歳出純計から除外される。
独自の事業支出: 0兆円= 歳出純計(0.3 − 0.3)
全歳出が国債整理基金への返済繰入のため歳出純計はゼロ。一般会計繰入 334億はその財源。
⑬ 特許(0.2兆円)
特許庁の審査・登録業務を管理。歳入の99.9%以上が特許料等の自己収入で税金依存度が最も低い特会。
特許審査・登録業務費: 0.2兆円= 歳出純計(他会計繰入はほぼゼロ)
審査官の人件費・システム費等。特許料・審査請求料(2,626億)でほぼ完全自己完結。
⑭ 地震再保険(0.1兆円)
民間損保が引き受けた地震保険を政府が再保険する仕組み。
地震再保険金支払・積立: 0.1兆円= 歳出純計(他会計繰入はゼロ)
地震発生時の保険金支払いと積立金への積み増し。民間損保からの再保険料(840億)と積立金運用益で完全独立採算。一般会計繰入なし。
※ 各会計は兆円未満を四捨五入して表示しているため、合計(429.4兆)は総額(429.5兆)と一致しない。実際の合計は4,294,812億円(= 429.4812兆円)で、四捨五入すると429.5兆円。出典: 財務省「令和7年版特別会計ガイドブック 参考データ集」
特会別の収支(歳入純計 − 歳出純計)— 合計 −59.4兆
歳入純計は「今年の新規収入」のみを計上し、前年度からの繰越金・積立金の取り崩しを含まない。歳出純計にはそのような除外がないため、過去に積み立てたお金を財源とする支出も含まれる。この非対称が約59兆の差を生む。特別会計は「今年集めたお金だけで賄われているわけではない」。
差 = 歳入純計 − 歳出純計。橙色行はマイナス(歳出超過・資金不足)、青色行はプラス(歳入超過)。各特会の純計サマリーと一致する。
| 特会 | 歳入純計 | 歳出純計 | 差 |
|---|---|---|---|
| ① 国債整理基金 | 0.7兆 | 85.5兆 | −84.8兆 |
| ② 年金 | 61.0兆 | 72.2兆 | −11.1兆 |
| ⑦ 子ども・子育て支援 | 1.4兆 | 5.7兆 | −4.3兆 |
| ⑨ 食料安定供給 | 1.0兆 | 1.1兆 | −0.1兆 |
| ⑤ エネルギー対策 | 14.7兆 | 1.9兆 | +12.8兆 |
| ④ 財政投融資 | 22.4兆 | 10.8兆 | +11.6兆 |
| ③ 交付税 | 32.3兆 | 21.6兆 | +10.7兆 |
| ⑧ 外国為替資金 | 4.9兆 | 0.8兆 | +4.2兆 |
| ⑥ 労働保険 | 4.4兆 | 3.3兆 | +1.1兆 |
| ⑫ 国有林野 | 0.3兆 | 0兆 | +0.3兆 |
| ⑩⑪⑬⑭ 復興・自動車・特許・地震 | 1.5兆 | 1.3兆 | +0.2兆 |
| 合計 | 144.7兆 | 204.1兆 | −59.4兆 |
国債整理基金の −84.8兆が最大の赤字要因。一般会計受入(28.2兆)と他特会受入(56.9兆)がほぼ全額を歳入から除外されるのに、対応する元本償還・利払い支出(85.5兆)は歳出純計に残るため。エネルギー・財投・交付税の青色行は借入金を多く受け入れているため歳入純計が歳出純計を上回り、プラスとなって赤字を相殺する。