Q. インフレが続くと、なぜ中間所得のサラリーマンが一番割を食うのか?
A. 税をコントロールできない・資産でインフレをヘッジできない・給付も受けられない——3つが重なるのが中間所得サラリーマンの構造的な弱点だ。
① 税・社保の逃げ道がない
サラリーマンの税と社会保険料は、給与が振り込まれる前に会社が自動的に引いている(源泉徴収・給与天引き)。手元に届く前に取られるので、タイミングも金額もコントロールできない。
一方、自営業者や経営者には節税の手段が多い。経費の計上・法人化・役員報酬の調整・退職金の活用……これらはほぼ「事業をやっている人」向けの仕組みだ。サラリーマンには原則使えない。
年末調整・確定申告で取り戻せる控除(医療費・ふるさと納税など)はあるが、経営者と比べると節税の余地は圧倒的に少ない。
② インフレの直撃を受ける——でも逃げ手が限られる
インフレが続くと、現金・預金の実質的な価値が毎年少しずつ目減りする(インフレ税)。高所得者は株や不動産などの実物資産を持っているので、インフレに連動して資産価値が上がる。しかし中間所得層は貯蓄の大半が現金・預金だ。
NISAで投資に回せばヘッジできる。ただし投資に充てられる余裕資金がそもそも少ない層には、効果が限定的になる。
③ 高所得でも低所得でもない——挟み撃ちになる
低所得層には給付・減免がある
住民税非課税世帯への給付金、各種の減免制度。これらは低所得層を対象にした制度で、中間所得層には対象外のものが多い。
高所得層は資産でヘッジできる
インフレが進んでも、株・不動産・外貨資産を持っていれば実質資産は守られる。節税手段も多い。
中間所得サラリーマン——どちらの恩恵も薄い
給付の対象にはならない。資産でのヘッジも難しい。税と社保は自動的に引かれ、インフレで購買力が削られ続ける。
目安として年収400〜800万円がこの層にあたる(日本の給与中央値は約390万円)。日本の働く人の中で最も人数が多いゾーンだ。
④ ブラケット・クリープ——増税宣言なしに税負担が増える
インフレが続くと、名目の賃金は少しずつ上がっていく。しかし所得税の税率区分(ブラケット)は物価に自動的に連動しない。
「実質的な生活水準は変わっていない」のに、名目賃金が上がったせいで一段上の税率区分に押し込まれる——これをブラケット・クリープ(bracket creep)と呼ぶ。実質賃金は上がっていないのに、税負担だけ増える。
政府は増税を宣言しなくても、インフレが進めば自然に税収が増える。これも「インフレが財政的に都合がいい」理由の一つだ。